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日の丸を掲げた手作りの巨大キッカー

FUTURE

ニセコから、フリーライドの未来へ

2026 ─ GEN SASAKI MAGAZINE / 編集部

佐々木玄には、はっきりとした目標がある。ひとつは、IF3国際フィルムフェスティバル ─ 世界的なフリースタイルスキーのムービーアワード ─ で賞を取ること。日本発の作品が、映像文化の本場で正面から評価されることだ。

そしてもうひとつは、もっと大きくて、もっと身近な目標。スキーをしたことのない人に、スキーの魅力と日本の雪の素晴らしさを伝えていくことだ。

純粋にスキーを楽しむなら、日本ほど雪が良く、環境に恵まれた場所はない。

日本は、世界一スキーに向いている

これは願望ではなく、比較の結論だ。スロープスタイルやビッグエアの大会で海外を転戦し、北米の人工雪も、ヨーロッパの氷河も、世界中の雪と山を滑ってきたからこそ言えることがある。雪質、降雪の安定感、市街地から山までのアクセス、温泉と食事 ─ 総合的に見て、日本ほどスキーに適した国はない。世界のトップライダーたちが毎年冬になると日本に通い続けるのは、偶然ではない。

春の雪山で、上裸でスキーを楽しむ佐々木玄
Spring Session ─ 春のニセコ。日本の雪は、4月になっても遊ばせてくれる

その一方で、日本発のハイレベルな映像作品はまだ多くない。世界が日本の雪に注目しているのに、日本人ライダー自身の言葉と映像で発信されるコンテンツは、需要に対して圧倒的に足りていない。海外のプロダクションが撮る「日本」は美しい。だが、この山で育った人間にしか撮れない「日本」が、まだ手つかずのまま残っている。

だからこそ、いま作る。だからこそ、いま発信する。

スコップで雪を削り出す佐々木玄
The Unseen Hours ─ 噴火の前の、地下の時間。キッカーは自分たちの手で削り出す

次の世代に、道筋を残す

フリーライド競技はオリンピック種目に採用され、日本でもフリーライドやバックカントリーの文化が少しずつ広がっている。いま日本のシーンに必要なのは、次の世代が目標にできる「道筋」だ。

日本人でも、Matchstick Productionsの作品に出られる。日本人でも、世界的ブランドのシグネイチャーモデルを持てる。日本の地元の山から始まったキャリアで、世界に届く作品を作れる ─ 佐々木玄がひとつずつ現実にしてきたことは、そのまま次の世代への証明になっている。あとは、それを「見える形」にして残すことだ。

羊蹄山を背に宙を舞う佐々木玄
Above Yotei ─ 羊蹄山の空へ。Photo: Isami Kiyooka

『VOLCANO』は、最初の一歩

短編映画『VOLCANO』は、その道筋を示す最初の一歩だ。フィルマー・山岸建矢とはこれまでも作品『GRAIN』をともに作ってきた。互いの技術と美学を知り尽くした二人が、Swatch Ninesでの受賞とクワッドバックフリップという「噴火の瞬間」と、そこに至るまでの見えない時間を、一本の映画に注ぎ込む。雪を削り、キッカーを作り、日の丸を掲げ、日が沈むまで飛び続ける ─ その積み重ねのすべてが、作品の「地下」に眠っている。

夕焼けのリッジで宙を舞うシルエット
VOLCANO ─ 噴火の瞬間だけでなく、その地下の時間を描く

ニセコの地元の山から始まったキャリアが、世界を回り、いままた地元から未来へ向けて発信を始める。このプラットフォームは、そのための基地だ。ニセコの、次のラインへ。Niseko Next Line ─ それはコースの名前ではなく、これから引かれていく物語の名前である。